有名な《夢魔》の2年後に描かれた、フュースリの初期の代表作の一つと言ってよい大作である。ここに描かれているのは、ドライデンの「テオドールとホノーリア」に表わされた一場面――恋するホノーリアから冷淡にあしらわれたラヴェンナの青年テオドーレが、ラヴェンナ郊外の森の中を歩いていると、やはり同じように恋人から冷酷な仕打ちを受けたため自らの命を断ったグイド・カヴァルカンティの亡霊が、裸身で逃げ惑うその恋人に獰猛な犬をけしかけているのに出くわす、という場面である。フュースリはここでは、ドライデンがもとにしたボッカチオによる物語をも踏まえたうえで、ドライデンがとりわけ強調した劇的な状況を、緊密な構成と古代彫刻研究に基づいた堅固な人体表現とによって見事に絵画化している。
(出典 国立西洋美術館ホームページ)
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