1880年代の「アングル時代」、または「酸っぱい様式の時代」から抜け出して、いわゆる「真珠色の時代」に入った頃の作品である。印象主義からいったん古典的傾向に戻ったのち、1890年代にルノワールは再び新たな方向をとり、以後、裸婦や肖像を主題に、多彩な色感、柔らかな質感をたたえた作風を発展させて行く。この《帽子の女》もそのような作例の一つで、さまざまな色彩が白と混じり合って繊細な輝きを放つ様は、まさに「真珠色の時代」という呼び名にふさわしい。 (出典 国立西洋美術館ホームページ)