ナティエはニコラ・ド・ラルジリエールの影響を受けて、宮廷の貴婦人たちを神話の中の人物の姿を借りて描くというフォンテーヌブロー派の伝統を復活させた。彼はこの種の肖像画を多数制作したが、それはその典型的な作例の一つであり、ここではモデルを川ないし泉の精に擬して描いている。こうした優美な描写は、その銀灰色に煙るような色彩とあいまって、女性の肖像画家としてのナティエの資質を垣間見せているが、一方では行き過ぎた理想化に対して当時から批判もあり、彼の晩年には既に、時代の趣味とはかけ離れたものとなっていた。 (出典 国立西洋美術館ホームページ)
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