「ジャ・ド・ブッファン」は、セザンヌの父が1859年に購入した、エクス市郊外の広大な屋敷の名称である。そこには農場と、かつてプロヴァンス地方の総督が住居にしていたという美しい館があった。本作品は、屋敷の裏手の出口付近を描いたものである。画面中央から左にかけてアラベスク風の枝ぶりを見せる数本のマロニエの木が粗い筆致で描かれ、また空もところどころ余白を残すなど、全体にスケッチ風の軽やかさを示すが、他方、塀や裏口から遠方の山々に続く大地の起伏は、帯状をなす青や青緑、朱などによって的確に表現され、セザンヌならではの堅固な空間秩序が保たれている。
(出典 国立西洋美術館ホームページ)
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