ミレーは、1864年4月、アルザス地方の町コルマールの銀行家トマから「四季」を主題とする3点のタブロー(春、夏、冬)と1点の天井画(秋)の制作を依頼された。それらは翌年に完成し、9月にトマの館の食堂に据え付けられた。本作品はその中の《春》であり、ロンゴスの作と伝えられる有名な古代ギリシャの田園小説『ダフニスとクロエ』に題材を得ている。それは、牧人夫妻に育てられた二人の捨て子ダフニスとクロエが幼い愛を育て、多くの微笑ましい曲折の末に結ばれるという物語である。この時代、ミレーの関心はおもに農民の生活に向けられていたが、ここでは、かつて1840年代に神話画や牧歌的主題の作品を学んだ時の経験が生かされ、それがフォンテーヌブローの自然への愛と見事に結びつけられている。
(出典 国立西洋美術館ホームページ)
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