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ボナールは装飾的な効果を十分に発揮できる大構図を好んで描いた。近年寄贈されたこの作品は、当時のパリで大画商として名高かったベルネーム＝ジューヌの邸宅のために制作された4点のほぼ同サイズの作品の一つである。
平面的、絵画的な効果を重視したナビ派の画家として出発し、生涯に渡って色彩と光に溢れた輝かしい作品を描きつづけたボナールであるが、純粋に室内装飾を目的とした作品は意外に少ない。その意味で、ベルネーム＝ジューヌ家の装飾画は貴重な作例の一つと考えられる。4点の作品はいずれも、フランス各地の風物をモティーフに、自然と文化の恵みを半ば象徴的に表そうとしている。西洋美術館所蔵作品は連作4点の中で唯一、いわゆる都市における「現代生活」の主題を扱っている点に特徴がある。画面に描かれているのはパリ郊外、セーヌ川下流のヌィイーに架かる橋の上の光景であろう。19世紀ごろから発達したこの地域には近代的大工場が多く、ボナールは、生き生きとした現代の都市生活を賛美しようとしてこの画題を選んだものと思われる。
橋の上を行き交う人々の傍らには、汗を流して働く人々が描かれている。また川面には煙突から煙をはく船も見える。前景に大きくモティーフを扱い、中景を簡略にして遠景に視線を導くダイナミックな構成は、他の3点にも共通して見られる手法である。
（出典 国立西洋美術館ホームページ）
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