この絵の制作された1890年は、ドニが初めてサロンに入選し、続いて「絵画とは、一定の秩序のもとに配された色彩によって覆われた、平らな面であることを忘れまい」という、有名な絵画の定義を含む論文を発表した年として重要である。事実この作品には、縦長の画面や署名などにみられる日本美術の影響、モザイクのような装飾的効果を発揮する点描技法の使用、宗教的礼拝像にも似た人物の取り扱いなど、この時期のドニの作品に特徴的なさまざまな要素が指摘されよう。そして、画面全体には、見慣れた身辺の事物の中にほのかな神秘感を漂わせるという、象徴主義時代のドニ芸術の手法が見事に発揮されている。
(出典 国立西洋美術館ホームページ)
|