1860年代後半、クールベはトルーヴィルやエトルタなどの英仏海峡に面した海岸をよく描いた。この地方の海岸はコロー、ブーダン、モネなどの制作の舞台であり、彼らは活動の中心地の名にちなんで「サン=シメオン派」と名付けられていたが、クールベもまた、その最も活動的なメンバーの一人であった
この《波》は1869年にエトルタで描かれたと推定される作品で、その絶え間なく変化し続ける波と空は、クールベの驚嘆すべき筆力によって不動の実在となっている。重くふさがれた空の下に巨大な波が白い波頭をあげて今まさに崩れかかろうとしている。その一瞬の動きをメチエで捉え、あたかも巨大な岩のように画面に定着させている。
(出典 国立西洋美術館ホームページ)
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