鹿児島市生まれ。はじめ日本画を学ぶが洋画に転じ、曽山幸彦、山本芳翠らに学ぶ。1896年東京美術学校助教授に就任、また同年白馬会の結成に参加。
藤島の画業は、繊細さと装飾性を兼ね備えた浪漫主義的な前期作品と、造形性に主眼を置いた明快で力強い後期作品とに大別できよう。渡欧体験がその境目となっているが、この作品《匂い》は、帰国後の移行期にあたる作品である。チャイナドレスをまとい、香を楽しむ女性には、浪漫主義的な優美さがまだ認められるが、一方で筆致や色彩はより単純化され、また女性の腕や左端の花瓶などが形成する画面構成の堅固さなど、造形的要素への関心の強さもうかがえる。
(出典 文化遺産オンライン・東京国立近代美術館ホームページ)
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