この作品などにおいて、それまでの主な関心が自然風景の表現だったのとうって変わって、浜に憩う人々の群れを、フリーズ状に描き出した。彼がこの頃から頻りに訪れたトルーヴィルは、パリの人々の避暑地として最先端の流行の土地であり、そこにはボードレール言うところの「現代生活」の風俗が至るところで見られたのである。この作品はすなわち、1860年頃からブーダンが試みた、戸外風景の中における人物群像の一つの決算である。高い空の表現にはボードレールによって「気象学的美の世界」と呼ばれた広がりと奥行を表わす微妙なニュアンスが用いられ、その下には海浜生活を楽しむ華やかな人々の集団が、画面に平行のフリーズ状に様々に描き込まれる。全体に灰青色のトーンの中に、赤が力強いアクセントをもたらしている。
(出典 国立西洋美術館ホームページ)
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