パリから鉄道で僅かの距離にあったセーヌ河沿いの町アルジャントゥイユは、日曜ともなればボート遊びの行楽客が集う典型的なパリの近郊都市であった。モネは、妻カミーユ、生まれたばかりの長男ジャンと共に1871年から78年までこの地に滞在した。ほぼ7年間にわたるこのアルジャントゥイユ時代は、印象主義者モネにとっての様式の完成期ともいえ、多くのみずみずしい感覚に溢れた作品が生みだされた。とりわけモネが惹かれたモティーフは、セーヌ河を往き来するヨットであったが、この作品《雪のアルジャントゥイユ》にみられるような、市街の風景も数多く制作された。1875年の冬に描かれたこの絵に表わされているのは、まだ整備されて間もない新市街のサン=ドニ大通りと鉄道の駅舎である。
モネは、戸外で絵を描く方法を採り始めてからすぐ雪景色を描いている。他の仲間の画家たちがあまり関心を示さなかったこの題材に対して、モネは積極的に取り組み、白い雪の上に戯れる繊細な光の効果を追求した。
(出典 国立西洋美術館ホームページ)
|